会社を守り、社員がやる気を出す就業規則

1.就業規則の意義

 従業員が安心して働ける明るい職場を作ることは、事業規模や業種を問わず、

全ての事業場にとって重要な事です。そのためには、あらかじめ就業規則

で労働時間や賃金をはじめ、人事・服務規律など、従業員の労働条件や待遇

の基準をはっきりと定め、労使間でトラブルが生じないようにしておくこと

が大切です。

 

 自分勝手なモンスター社員や問題社員対応というばかりではなく、まじめな社員や優秀な

社員がモチベーション低下したり、やる気をなくして退職してしまっては会社の生産性も低下

し、会社にとっては大きな痛手となります。

 正直者がバカをみないためには、その場しのぎの対応は禁物です。会社として、

公明正大に、理念や行動について何がよくて何が悪いのか、あらかじめ明確にしておく

ことが肝要です。

 

 急増している賃金、解雇・退職勧奨、労働契約、メンタルヘルス疾患、パワハラ、

セクハラなどの労使間トラブルを未然に防ぐためには、会社と従業員の双方が納得

するような就業規則を作成し、職場全体のルールを明確にすることが必要です。

 就業規則の作成は、従業員にとっては安心していきいきと働くことのできる

明るい職場づくりの第一歩となり、会社にとっては経営を円滑に進め、発展していく

ためのたいへん重要なツールとなります。

 

 また、近年は、個人の働き方が多様化し、パートタイマー、有期契約社員、派遣社員

など正社員以外の非正規社員が増えており、非正規社員用の就業規則を作成しておく

ことは不可欠であり、トラブル防止に大切なことです。

 

2.就業規則とは?

就業規則

 =会社のルール=労働契約

「労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、

使用者が合理的な労働条件定められている就業規則

労働者に周知させていた場合には労働契約の内容は、

 その就業規則で定める労働条件によるものとする。」

(労契法7条)

 

3.就業規則の作成及び変更の手続(届出義務)

 労基法は、従業員を1人でも使用する事業場に適用されますが、就業規則については、

常時10人以上の従業員を使用する事業場において、これを作成し、所轄労働基準監督署長

に届け出なければならない。就業規則を変更する場合も同様である。

 

 また、就業規則は、企業単位ではなく事業場単位で作成しなければならない。

例えば、1企業で2以上の営業所、店舗等を有している場合、企業全体の従業員の数を

合計するのではなく、それぞれの営業所、店舗等を1つの事業場としてとらえ、

常時使用する従業員が10人以上の事業場について就業規則を作成する義務が生じる。

(労基法89条)

 

 なお、就業規則は事業場ごとに届け出る必要があるが、複数の営業所、店舗等の事業場

を有する企業については、営業所、店舗等の就業規則が本社の就業規則と同一の内容

のものである場合に、本社所在地を管轄する労働基準監督署長を経由して一括して

届け出ることも可能である。

 

4.意見聴取義務

 就業規則を作成し、又は変更する場合の所轄労働基準監督署長への届出については、

労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、過半数で組織する

労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者の意見を記し、その者の署名又は

記名押印のある書面(意見書)を添付しなければならない(労基法90条)。

 

 この場合の労働者の過半数を代表する者は、

①労基法第41条第2号に規定する監督又は管理の地位にある者でないこと、

②就業規則の作成及び変更の際に、使用者から意見を聴取される者を選出することを

明らかにして実施する投票、挙手等の方法によって選出された者であることのいずれにも

該当する者でなければならない(労基法施行規則第6条の2)。

 

☆就業規則の作成又は変更に当たっては、その内容をよく吟味するとともに上記の手続等

を遵守しなければならない。特に、就業規則を従業員にとって不利益に変更する場合には

従業員の代表の意見を十分に聴くとともに、変更の理由及び内容が合理的なものとなる

よう慎重に検討することが必要である。

 

5.就業規則の周知義務

 作成した就業規則は、各従業員への配付、従業員がいつでも見られるように職場の

見やすい場所への掲示、又は備付け、あるいはパソコンなどで確認できるようにする

といった方法により、従業員に周知しなければならない(労基法第106条第1項)。

 

★就業規則は、作成や、従業員の代表者から意見を聴取しただけでは効力は発生しない

と解されている。就業規則の効力発生時期は、就業規則が何らかの方法によって

従業員に周知された時期以降で、就業規則に施行期日が定められているときはその日、

就業規則に施行期日が定められていないときは、通常は従業員に周知された日と解されている。

 

6.絶対的必要記載事項

(1)労働時間関係

  始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を2組以上に分けて

 交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項

(2)賃金関係

  賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに

 昇給に関する事項

(3)退職関係

  退職に関する事項(解雇の事由を含む)

 

7.相対的必要記載事項

(1)退職手当関係

  適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに

 退職手当の支 払の時期に関する事項

(2)臨時の賃金・最低賃金額関係

  臨時の賃金等(退職手当を除く)及び最低賃金額に関する事項

(3)費用負担関係

  労働者に食費、作業用品その他の負担をさせることに関する事項

(4)安全衛生関係

  安全及び衛生に関する事項

(5)職業訓練関係

  職業訓練に関する事項

(6)災害補償・業務外の傷病扶助関係

  災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項

(7)表彰・制裁関係

  表彰及び制裁の種類及び程度に関する事項

(8)その他

  事業場の労働者すべてに適用されるルールに関する事項

 

8.任意記載事項

(1)経営理念、社是、社訓など

(2)就業規則の総則的事項

  目的、適用範囲、場所的範囲、用語の定義、遵守事項など

(3)採用関連

  採用手続き、雇入れ時の提出書類など

 

9.就業規則違反の労働契約

・就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、

無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。

(労働契約法12条)

・労働契約と就業規則との関係については、労働契約法第12条の定めるところによる。

(労基法93条、労働契約との関係)

就業規則を下回る労働契約は、その部分については就業規則で定められる基準まで

引上げられ、その他の部分は有効。就業規則の基準を上回る労働契約は有効。

 

10.法令及び労働協約と就業規則との関係
・就業規則が法令又は労働協約に反する場合には、当該反する部分については、

当該法令又は労働協約の適用を受ける労働者との間の労働契約については、適用しない。

(労働契約法13条)
・就業規則は、その内容が法令及び当該事業場において適用される労働協約に反しては

ならない。法令又は労働協約に反する就業規則については、所轄労働基準監督署長は

その変更を命ずることができる(労基法92条、法令及び労働協約との関係)。
就業規則で定める労働条件が法令又は労働協約に反している場合は、

その労働条件は 労働契約の内容とはならない。

 

11.就業規則による労働契約の内容の変更について

・使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益

に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。

ただし、次条の場合は、この限りでない(労働契約法9条)

労働契約の変更についての「合意の原則」に従い、労使の合意なく、就業規則の変更

により、労働条件を労働者の不利益に変更することはできない。

労働者の不利益とは、 個々の労働者の不利益をいう。

▲ただし書きは、第9条の原則の例外を第10条に規定した。

 

・使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、

変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、

労働者の受ける不利益 の程度、労働条件の変更の必要性、

変更後の就業規則の内容の相当性、 労働組合等との交渉の状況

その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは

労働契約の内容である労働条件は、

当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。

 ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては

変更 されない労働条件として合意していた部分については、

第12条に該当する場合を除き、 この限りでない。 (労働契約法10条)

変更後の就業規則の労働者への周知かつ、就業規則の変更が合理的な場合は、

例外として、合意がなくても、労働契約の内容も合わせて変更となる

★合理性の判断基準

 1.労働者が被る不利益の程度

 2.使用者側の変更の必要性

 3.相当性(内容自体、代償措置、一般的状況)

 4.労働組合等との交渉の経緯

 

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