年次有給休暇の時季指定義務(年5日)

▽平成31(2019)年4月~施行

■年次有給休暇の年5日の時季指定義務(概要)

全ての企業において、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して、年次有給休暇の日数のうち年5日については、使用者が時季を指定して取得させることが必要となった。

 

  労働者の申出による取得(原則)+使用者の時季指定による取得(新設)

  「〇月✖日に休みます」     「〇月✖日に休んで下さい」

 

☆ポイント

1.対象者

  対象者は、年次有給休暇が10日以上付与される労働者(管理監督者を含む)に限る。

 

2.年5日の指定義務(労働基準法第39条第7項)

  労働者ごとに、年次有給休暇を付与した日(基準日)から1年以内に5日について、使用
 者が取得時季を指定して与える必要がある。

 

3.時季指定の方法

  使用者は、時季指定に当たっては、労働者の意見を聴取し、その意見を尊重するよう努め

 なければならない。

 

4.時季指定を要しない場合

  年次有給休暇を5日以上取得済みの労働者に対しては、使用者による時季指定は不要であ

 り、又、することもできない。

 

5.5日から控除

  労働者が自ら申し出て取得した日数や、労使協定で取得時季を定めて与えた日数(計画的

 付与)については、5日から控除する必要がある。

 

6.年次有給休暇管理簿(労規則24条の7 省令)

  使用者は、労働者ごとに年次有給休暇管理簿を作成し、3年間保存しなければならない。

 

7. 就業規則への規定(労働基準法89条)

    休暇に関する事項は就業規則の絶対的必要記載事項(労働基準法第89条)であるた

 め、使用者による年次有給休暇の時季指定を実施する場合は、時季指定の対象となる

  労働者の範囲及び時季指定の方法等について、就業規則に記載しなければならない。

 

8.罰則(労働基準法120条)

  年5日の年次有給休暇を取得させなかった場合(労働基準法第39条第7項)や使用者による時季

  指定を行う場合において、就業規則に記載していない場合(労働基準法第89条)に違反した場合

  は、一人につき、30万円以下の罰金が科されることがある。

 

 

▽付与日が法定基準日と異なる場合

1.入社日付与など法定基準日より前に付与する場合

 例)4/1入社時に10日付与する場合

 →付与した日(4/1)から1年以内(4/1~翌3/31)に5日取得させなければならない。

 

2.基準日付与方式の場合

 例)4/1入社で、初年度は10/1に付与。翌年度は4/1に付与する場合

 →重複が生じるそれぞれの期間を通じた期間(前の期間の始期~後の期間の終期までの期

  間)の長さに応じた日数(比例按分日数)を、当該期間に取得させることも認められる。

 

  ▶計算式 5日×18月/12=7.5日以上取得

  (18月に10日取得だと企業負担が大きくなるため)

 

3.上記1.2の期間経過後は当該期間の最終日の翌日から1年間に5日取得させなければ

 ならない。

 

4.10日のうち一部を前倒し付与した場合

 例)4/1入社時に5日付与し、7/1に残り5日付与する場合

 →付与日数の合計が10日に達した日~1年間(7/1~翌6/30)に5日の指定義務がかかる。

  ▲当該日以前(4/1~6/30)に、分割して前倒し付与した年次有給休暇について労働者が

  自ら取得した日数は、5日の指定義務から控除することができる。

 

 →翌年度は4/1付与となるので、上記2.に準じる。

  (7/1~翌6/30)+(翌4/1~翌々3/31)→(7/1~翌々3/31)=21月

  ▶計算式 5日×21月/12=8.75日以上取得でも可

年5日年次有給休暇取得義務Q&A

 ■年5日年次有給休暇取得義務Q&A

 Q1.使用者が年次有給休暇の時季を指定する場合に、半日単位年休とすることは差し

 支えないか。また、労働者が自ら半日単位の年次有給休暇を取得した場合には、そ

 日数分を使用者が時季を指定すべき年5日の年次有給休暇から控除することができ

 か。

 

A1.時季指定に当たって、労働者の意見を聴いた際に、半日単位での年次有給休暇の

 取の希望があった場合には、半日(0.5日)単位で取得することとして差し支えな

 い。また、労働者自ら半日単位の年次有給休暇を取得した場合には、取得1回につき

 0.5として、使用者が時季を指定すべき年5日の年次有給休暇から控除することがで

 き※なお、時間単位の年次有給休暇については、使用者による時季指定の対象と

 はならず、労働者が自ら取得した場合にも、その時間分を5日から控除することはで

 きない。

 

Q2.前年度からの繰り越し分の年次有給休暇を取得した場合には、その日数分を使用

 者が時季を指定すべき年5日の年次有給休暇から控除することができるか。

 

A2.労働者が実際に取得した年次有給休暇が前年度からの繰り越し分の年次有給休暇であるか当年度の基準日に付与された年次有給休暇であるかについては問わないものであり、質問のような取扱いも可能である。

 

Q3.法定の年次有給休暇に加えて、会社独自に法定外の有給の特別休暇を設けている

 場合には、その取得日数を5日から控除することはできるか

 

A3.法定の年次有給休暇とは別に設けられた特別休暇(例えば、時効が経過した後においても、取得の事由及び時季を限定せず、法定の年次有給休暇日数を引き続き取得可能としている場合のように、法定の年次有給休暇日数を上乗せするものとして付与されるものを除く。)を取得した日数分については、 控除することはできない。

  ※なお、当該特別休暇について、今回の改正を契機に廃止し、年次有給休暇に振り替

 えることは、法改正の趣旨に沿わないものであるとともに、労働者と合意をすること

 なく就業規則を変更することにより特別休暇を年次有給休暇に振り替えた後の要件・

 効果が労働者にとって不利益と認められる場合は、就業規則の不利益変更法理に照ら

 して合理的なものである必要がある。

 

Q4.今回の法改正を契機に、法定休日ではない所定休日を労働日に変更し、当該労働

 日について、使用者が年次有給休暇として時季指定することはできるか。

 

A4.質問のような手法は、実質的に年次有給休暇の取得の促進につながっておらず、望ましく

 ない。

 

Q5.出向者については、出向元、出向先どちらが年5日確実に取得させる義務を負う

 か。

 

A5.在籍出向の場合は、労働基準法上の規定はなく、出向元、出向先、出向労働者三

 者間の取り決めによる。(基準日及び出向元で取得した年次有給休暇の日数を出向先

 の使用者が指定すべき5日から控除するかどうかについても、取り決めによる。)

  移籍出向の場合は、出向先において10日以上の年次有給休暇が付与された日から1

 年間について5日の時季指定を行う必要がある。なお、この場合、原則として出向先に

 おいて新たに基準日が特定されることとなり、また、出向元で取得した年次有給休暇

 の日数を出向先の使用者が指定すべき5日から控除することはできない。

 

Q6.使用者が年次有給休暇の時季指定をするだけでは足りず、実際に取得させること

 まで必要か。

 

A6.使用者が5日分の年次有給休暇の時季指定をしただけでは足りず、実際に基準日

 から1年以内に年次有給休暇を5日取得していなければ、法違反として取り扱うこと

 になる。

 

Q7.使用者が時季指定した日が到来する前に労働者が自ら年次有給休暇を5日取得し

 た場合は、当初使用者が時季指定した日に労働者が年次有給休暇を取得しなくても、

 法違反にはならないと考えてよいか。

 

A7.労働者が自ら5日年休を取得しているので、法違反にはあたらない。なお、この

 場合において、当初使用者が行った時季指定は、使用者と労働者との間に特段の取決

 めがない限り、無効とはならない。

 

Q8.休職している労働者についても、年5日の年次有給休暇を確実に取得させる必要

 があるか。

 

A8.例えば、基準日からの1年間について、それ以前から休職しており、期間中に一

 度も復職しなかった場合など、使用者にとって義務の履行が不可能な場合には、法違

 反を問うものではない。

 

Q9.年度の途中に育児休業から復帰した労働者等についても、年5日の年次有給休暇

 を確実に取得させる必要があるか。

 

A9.年度の途中に育児休業から復帰した労働者等についても、年5日の年次有給休暇

 を実に取得させる必要がある。ただし、残りの期間における労働日が、使用者が時

 季指定すべき年次有給休暇の残日数より少なく、5日の年次有給休暇を取得させるこ

 とが不可能な場合には、その限りではない。

 

Q10.使用者が時季指定した年次有給休暇について、労働者から取得日の変更の申出が

 あった場合には、どのように対応すればよいか。また、年次有給休暇管理簿もその

 都度修正しなくてはいけないか。

 

A10.労働者から取得日の変更の希望があった場合には、再度意見を聴取し、できる限

 り労働者の希望に沿った時季とすることが望ましい。また、取得日の変更があった場

 合は年次有給休暇管理簿を修正する必要がある。

 

11.管理監督者にも年5日の年次有給休暇を確実に取得させる必要があるか。

 

A11.ある。管理監督者も義務の対象となる。

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