電電公社帯広局事件(最高裁S61.3.31)

▽労働契約法第7条(労働契約の内容と就業規則の関係)に関する判例

 

■電電公社帯広局事件(概要)
 健康診断受診の業務命令を拒否した労働者に対して、懲戒処分を行った事で、
秋北バス事件の判決の考え方を踏襲し、

就業規則上の労働者の健康管理上の義務は合理的であり、

労働契約の内容となっているとし、

健康診断の受信拒否は懲戒事由に当たり、懲戒処分が有効とされた。

★ポイント
1.電話交換の作業に従事する職員Xは、昭和49年7月、頸肩腕症候群と診断

 され、会社の健康管理規程に定める指導区分のうち、最も病状の重い「療養」

 にあたることとされた。

2.会社は、昭和53年10月、Xに対し、頸肩腕症候群の精密検診を受診する

 よう、二度にわたって業務命令を発したが、Xはこれを拒否した。

 

3.労働組合は、この検診が労使確認事項であるとしながらも、

 Xが受診拒否の意向を示しており、

 業務命令発出という形にまで発展したことを重視し、非公開で団交を行った。
 この際、Xは、会議室に立ち入り、組合役員の退去指示にも従わなかった。
 この間、Xは、約10分間にわたり、職場を離脱した。

☆判決
 「労働条件を定型的に定めた就業規則は、

一種の社会的規範としての性質を有するだけでなく、

その定めが合理的なものであるかぎり、個別的労働契約における労働条件の決定は、

その就業規則によるという事実たる慣習が成立しているものとして、

法的規範としての性質を認められるに至っており、当該事業場の労働者は、

就業規則の存在及び内容を現実に知っていると否とにかかわらず、

又、これに対して個別的に同意を与えたかどうかを問わず、

当然にその適用を受けるというべきである。(秋北バス事件)」

 「就業規則が労働者に対し、一定の事項につき使用者の業務命令に服従すべき旨

を定めているときは、そのような就業規則の規定内容が合理的なものであるかぎり

において当該具体的労働契約の内容をなしているものということができる。」

 「就業規則及び健康管理規程によれば、職員は常に健康の保持増進に努める義務

があるとともに、健康管理上必要な事項に関する健康管理従事者の指示を誠実に遵守

する義務があるばかりか、要管理者は、健康回復に努める義務があり、その健康回復

を目的とする健康管理従事者の指示に従う義務があることとされているのであるが、

この内容は、職員が労働契約上その労働力の処分を会社に委ねている趣旨に照らし、

いずれも合理的なものというべきであるから、職員の健康管理上の義務は、

会社と職員との間の労働契約の内容となっているものというべきである。」

 「Xに対し精密検診の受診を命ずる本件業務命令については、その効力を肯定する

ことができ、これを拒否したXの行為は就業規則59条3号所定の懲戒事由にあたる

というべきである。」
 
 「職場離脱が同条18号の懲戒事由にあたることはいうまでもなく、

2個の懲戒事由及び前記の事実関係に鑑みると、戒告処分が翌年の定期昇給における

昇給額の4分1減額という効果を伴うものであること(就業規則76条4項3号)

を考慮に入れても、会社がXに対してした本件戒告処分が、

社会通念上著しく妥当を欠き、裁量権の範囲を超え、

これを濫用してされた違法なものであるとすることはできない。」

 

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