労働契約法【第1章 総則】

第1条(目的)

(目的)
第1条 この法律は、労働者及び使用者の自主的な交渉の下で、

   労働契約が合意により成立し、又は変更されるという合意の原則

   その他労働契約に関する基本的事項を定めることにより、

   合理的な労働条件の決定又は変更が円滑に行われるようにすることを通じて、

   労働者の保護を図りつつ、個別の労働関係の安定に資することを目的とする。

■コメント
 第1条は、法の目的を明らかにしている。

●「合意の原則」には、

 労使対等の原則(3条1項)労働契約の成立についての合意の原則(6条)
 変更についての合意の原則(8条)が含まれる。

●合理的な労働条件の決定は変更が円滑に行われることにより、個別労働関係紛争が
 防止されることになる。

第2条(定義)

(定義)
第2条 この法律において「労働者」とは、使用者に使用されて労働し、

   賃金を支払われる者をいう。
  2 この法律において「使用者」とは、その使用する労働者に対して

   賃金を支払う者をいう。

■コメント
 労働契約の締結当事者である「労働者」と「使用者」を定義。

●労働者
 民法第623条の「雇用」の労働に従事する者はもとより、632条の「請負」、

 643条の「委任」又は非典型契約で労務を提供する者であっても契約形式にとらわれず
 実態として使用従属関係が認められる場合は該当する。

●使用者
 個人企業の場合はその企業主個人、会社その他の法人組織の場合はその法人そのもの
 △労働基準法第10条の「事業主」に相当、同条の「使用者」より狭い概念である。

第3条(労働契約の原則)

(労働契約の原則)
第3条  労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、
   又は変更すべきものとする。
  2 労働契約は、労働者及び使用者が、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、
   又は変更すべきものとする。
  3 労働契約は、労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、
   又は変更すべきものとする。
  4 労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に

   権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。
  5 労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、

   それを濫用することがあってはならない。

■コメント
 第3条では、以下の労働契約の基本理念、共通原則である《労働契約の5原則》

明らかにしている。

 《労働契約の5原則》
●労使対等の原則
 △労働基準法第2条第1項「労働条件の決定について労働者と使用者が対等の立場に
立つべき」と同様の趣旨

●均衡考慮の原則
 労働契約は、正社員、パート、契約社員といった就業の形態ではなく、就業の実態によって

締結したり、変更されるべきものである。

●仕事と生活の調和への配慮の原則(ワークライフバランス)
 労働契約は、育児や介護などの問題を考慮して締結・変更されるべきものである。

●労働契約遵守・信義誠実の原則
 △民法第1条第2項「権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければ
ならない」適用
 △労働基準法第2条第2項「就業規則、労働契約等の遵守」と同様の趣旨
 締結した労働契約について、お互いに約束を破ることなく、信義を守り、誠実を旨として

行動するといった倫理的規範を法律上のルールとした。

●権利濫用の禁止
 △民法第1条第3項「権利の濫用はこれを許さない」適用
 第3章で規定している、出向、懲戒及び解雇に関する権利濫用以外も、
この第3条第5項は適用される。

第4条(労働契約の内容の理解の促進)

(労働契約の内容の理解の促進)
第4条 使用者は、労働者に提示する労働条件及び労働契約の内容について、
   労働者の理解を深めるようにするものとする。
  2 労働者及び使用者は、労働契約の内容(期間の定めのある労働契約に関する事項

   を含む。)について、できる限り書面により確認するものとする。

■コメント
 個別労働紛争を防止するために、契約内容があいまいなまま労働契約関係が継続する
ことがないよう、第4条では、労働契約の内容の理解の促進について規定。

●労働者の理解を深めるためには、労働契約締結または変更の際に、使用者がそれを説明

し、労働者の求めに応じて誠実に回答すること。

●労働者が就業規則に記載された労働条件について説明を求めた場合に、使用者が

その内容を説明すること。

●有期労働契約では、期間満了時において、更新の有無や更新の判断基準が
あいまいであるために個別労働紛争が生じていることが少なくない。

第5条(労働者の安全への配慮)

(労働者の安全への配慮)
第5条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ

   労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

■コメント
 労働契約の内容として具体的に定めずとも、労働契約に伴い信義則上当然に、使用者は、
労働者を危険から保護するよう配慮すべき安全配慮義務を負っている(判例)
 ▲民法等の規定からは明らかになっていない。
 第5条では、使用者は当然に安全配慮義務を負うことを規定した。

●生命、身体等の安全には、心身の健康も含まれる。

△労働安全衛生法においては、事業主の講ずべき具体的な措置が規定されており、
 これらは、当然に遵守されなければならないものである。

◇参考最高裁判例
陸上自衛隊事件(S50.2.25)
 陸上自衛隊員が、自衛隊内の車両整備工場で車両整備中、後退してきたトラックに
ひかれて死亡した事例で、国の公務員に対する安全配慮義務を認定した。

川義事件(S59.4.10)
 宿直勤務中の従業員が盗賊に殺害された事例で、会社に安全配慮義務の違背に
基づく損害賠償責任があるとされた。

 

 

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