マタハラ基準Q&A(厚生労働省H27.3.30)

妊娠・出産・育児休業等を契機とする不利益取扱いに係るQ&A

 

Q1.妊娠・出産・育児休業等を理由とする不利益取扱いに関しては、

 平成26年の最高裁判決を踏まえた解釈通達において、

 妊娠・出産・育休等の事由を「契機として」不利益取扱いが行われた場合は、

 原則として妊娠・出産・育休等を「理由として」不利益取扱いがなされたと解され、

 法違反だとされている。

  また、同通達では、「契機として」いるか否かは、基本的に、妊娠・出産・育休等

 の事由と時間的に近接しているかで判断するとされているが、具体的にはどのように

 判断するのか。

 

A1.原則として、妊娠・出産・育休等の事由の終了から1年以内に不利益取扱いが

 なされた場合は「契機として」いると判断する。

 ただし、事由の終了から1年を超えている場合であっても、実施時期が事前に決まっ

 ている、又は、ある程度定期的になされる措置(人事異動(不利益な配置変更等)、

 人事考課(不利益な評価や降格等)、雇止め(契約更新がされない)など)について

 は、事由の終了後の最初のタイミングまでの間に不利益取扱いがなされた場合は

「契機として」いると判断する。

 

Q2.妊娠・出産・育児休業等を「契機として」いても、法違反ではないとされる

「例外」の1つ目として、「業務上の必要性から不利益取扱いをせざるを得ず、

 業務上の必要性が、当該不利益取扱いにより受ける影響を上回ると認められる

 特段の事情が存在するとき」とされている。

 具体的に、どのような場合であれば「特段の事情が存在」するものとして、

 違法でないと言えるのか。

 

A2.「特段の事情が存在」するものとして違法でないと言い得るのは、

 (1)「業務上の必要性」から不利益取扱いをせざるを得ない状況であり、かつ、

  (2)「業務上の必要性」が、不利益取扱いにより受ける影響を上回る場合である。

 

※1.上記(2)の不利益により受ける影響とは、

 不利益取扱いや、不利益取扱いの契機となった事由に、有利な影響がある場合

(例:本人の意向に沿った業務負担の軽減等)は、それも加味した影響

  この場合は、妊娠・出産・育児休業等を「契機として」いても、法が禁止している

 妊娠・出産・育児休業等を「理由とする」不利益取扱いではないと解される。

 

※2.上記(1)「業務上の必要性」から不利益取扱いをせざるを得ない状況であるか

 については、

 例えば、Ⅰ.経営状況(業績悪化等)やⅡ.本人の能力不足等を理由とする場合、

 以下の事項等を勘案して判断する。

 

 Ⅰ.経営状況(業績悪化等)を理由とする場合

    ア.事業主側の状況(職場の組織・業務態勢・人員配置の状況)

   ①債務超過や赤字の累積など不利益取扱いをせざるを得ない事情が生じているか

   ②不利益取扱いを回避する真摯かつ合理的な努力(他部門への配置転換等)

  がなされたか

 イ.労働者側の状況(知識・経験等)

 ①不利益取扱いが行われる人の選定が妥当か

 (職務経験等による客観的・合理的基準による公正な選定か)

 

 Ⅱ.本人の能力不足・成績不良・態度不良等を理由とする場合

 (但し、能力不足等は、妊娠・出産に起因する症状によって労務提供ができないこと

 や労働能率の低下等ではないこと)

  ア.事業主側の状況(職場の組織・業務態勢・人員配置の状況)

 ①妊娠等の事由の発生以前から能力不足等を問題としていたか

 ②不利益取扱いの内容・程度が、能力不足等の状況と比較して妥当か

 ③同様の状況にある他の(問題のある)労働者に対する不利益取扱いと均衡が

  図られているか

 ④改善の機会を相当程度与えたか否か(妊娠等の事由の発生以前から、通常の

 (問題のない)労働者を相当程度上回るような指導がなされていたか等)

 ⑤同様の状況にある他の(問題のある)労働者と同程度の研修・指導等が行われ

   ていたか

    イ.労働者側の状況(知識・経験等)

 ①改善の機会を与えてもなお、改善する見込みがないと言えるか

 

Q3.妊娠・出産・育児休業等を「契機として」いても、法違反ではないとされる

「例外」の2つ目として、「労働者が同意している場合で、有利な影響が不利な影響

 の内容・程度を上回り、事業主から適切に説明がなされる等、一般的な労働者なら

 同意するような合理的な理由が客観的に存在するとき」とされている。

  具体的に、どのような場合であれば違法でないと言えるのか。労働者本人が同意

 していればよいのか。

 

A3.

1.単に当該労働者が同意しただけでは足りず、有利な影響が不利な影響を上回って

 いて、事業主から適切な説明を受けたなど、当該労働者以外の労働者であっても

 合理的な意思決定ができる者であれば誰しもが同意するような理由が客観的に存在

 している状況にあることが必要である。

   この場合は、そもそも法が禁止する「不利益な取扱い」には当たらないものと解さ

 れる。

 

2.このため、具体的には以下の事項等を勘案して判断することとなる。

(1)事業主から労働者に対して適切な説明が行われ、労働者が十分に理解した上で

 当該取扱いに応じるかどうかを決めることができたか

 (2)その際には、不利益取扱いによる直接的影響だけでなく、間接的な影響

 (例:降格(直接的影響) に伴う減給 (間接的影響) 等)についても説明したか

   (3)書面など労働者が理解しやすい形で明確に説明がなされたか

 (4)自由な意思決定を妨げるような説明

  (例:「この段階で退職を決めるなら会社都合の退職という扱いにするが、

    同意が遅くなると自己都合退職にするので失業給付が減額になる」と説明する等)

   がなされていないか

 (5)契機となった事由や取扱いによる有利な影響

  (労働者の意向に沿って業務量が軽減される等)があって、その有利な影響が不利な

  影響を上回っているか

 

マタハラ最高裁判例(H26.10.25)

 

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