個別労働関係紛争の解決に関する法律

平成13年10月~施行

▽個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律(平成13年法律第112号)

(目的)
第1条 この法律は、労働条件その他労働関係に関する事項についての個々の労働者と

事業主との間の紛争(労働者の募集及び採用に関する事項についての個々の求職者と

事業主との間の紛争を含む。以下「個別労働関係紛争」という。)について、あっせんの制度

を設けること等により、その実情に即した迅速かつ適正な解決を図ることを目的とする。

(紛争の自主的解決)
第2条 個別労働関係紛争が生じたときは、当該個別労働関係紛争の当事者は、早期に、

かつ、誠意をもって、自主的な解決を図るように努めなければならない。

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(労働者、事業主等に対する情報提供等)
第3条 都道府県労働局長は、個別労働関係紛争を未然に防止し、及び個別労働関係紛争

の自主的な解決を促進するため、労働者、求職者又は事業主に対し、労働関係に関する

事項並びに労働者の募集及び採用に関する事項についての情報の提供、

相談その他の援助を行うものとする。

◆解説
1.個別労働紛争が発生する原因の中には、法令や判例を知らなかったり、認識不足に

基づくものが多くみうけられる。

2.そのために、労働問題について情報を入手したり相談をすることにより、

紛争に発展することを未然に防止し、紛争を早期に解決することができる。

3.このため、各都道府県労働局の総務部企画室等に「総合労働相談コーナー」を設置し、
総合労働相談員を配置している。

4.総合労働相談コーナーでは、解雇、雇止め、配置転換、賃金の引下げ等の労働条件

のほか、募集、採用、いじめ、男女均等取扱い、セクシュアルハラスメントなど、

労働問題に関するあらゆる分野についての労働者、事業主からの相談を、

専門の相談員が、面談・電話で行っている。

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(当事者に対する助言及び指導)
第4条 都道府県労働局長は、個別労働関係紛争(▲労働関係調整法第6条に規定する

労働争議に当たる紛争及び国営企業及び特定独立行政法人の労働関係に関する法律

第26条第1項に規定する紛争を除く。)に関し、当該個別労働関係紛争の当事者の双方

又は一方からその解決につき援助を求められた場合には、

当該個別労働関係紛争の当事者に対し、必要な助言又は指導をすることができる。

◆解説
1.都道府県労働局長による助言・指導は、民事上の個別労働紛争について、

都道府県労働局長が、紛争当事者に対し、個別労働紛争の問題点を指摘し、

解決の方向を示唆することにより、紛争当事者が自主的に民事上の個別労働紛争を

解決することを促進する制度である。

△法違反の是正を図るために行われる行政指導とはおのずと性格が異なり、

紛争当事者に対して話し合いによる解決を促すものであって、

一定の措置の実施を強制するものではない。

2.対象となる紛争の具体例
●解雇、雇止め、配置転換・出向、昇進・昇格、労働条件の不利益変更等の労働条件

に関する紛争

●いじめ、嫌がらせ等職場環境に関する紛争

●会社分割による労働契約の承継、同業他社への就業禁止等の労働契約に関する紛争

●募集、採用に関する紛争

●その他、退職に伴う研修費用の返還、会社所有物の破損に係る損害賠償をめぐる紛争など

▲対象とならない紛争例
×労働組合と事業主の間の紛争や、労働者と労働者の間の紛争

×裁判で係争中である場合、又は判決確定が出されている等、

他の制度において取り扱われている紛争

 

×労働組合と事業主との間で問題として取り上げられており、 両社の間で自主的な解決

を図るべく話し合いが進められている紛争

 

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2 都道府県労働局長は、前項に規定する助言又は指導をするため必要があると

認めるときは、広く産業社会の実情に通じ、かつ、労働問題に関し専門的知識を有する者

の意見を聴くものとする。

3 事業主は、労働者が第一項の援助を求めたことを理由として、当該労働者に対して

解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

◆解説
 労働者が助言・指導の申出をしたことを理由に、事業主が労働者に対して解雇その他

不利益な取扱いをすることは、法律で禁止されている。

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(あっせんの委任)
第5条 都道府県労働局長は、前条第1項に規定する個別労働関係紛争

(▲労働者の募集及び採用に関する事項についての紛争を除く。)について、

当該個別労働関係紛争の当事者(以下「紛争当事者」という。)の双方又は一方から

あっせんの申請があった場合において当該個別労働関係紛争の解決のために

必要があると認めるときは、紛争調整委員会にあっせんを行わせるものとする。

2 前条第3項の規定は、労働者が前項の申請をした場合について準用する。

◆解説
 あっせんとは、紛争当事者の間に公平、中立な第三者として学識経験者が入り、

双方の主張の要点を確かめ、双方から求められた場合には両者が採るべき

具体的なあっせん案を提示するなど、紛争当事者間の調整を行い、

話し合いを促進することにより、紛争の解決を図る制度である。

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(委員会の設置)
第6条 都道府県労働局に、紛争調整委員会(以下「委員会」という。)を置く。

2 委員会は、前条第1項のあっせんを行う機関とする。

◆解説
1.紛争調停委員会とは弁護士、大学教授、社会保険労務士等の労働問題の専門家である
学識経験者により組織された委員会であり、都道府県労働局ごとに設置されている。

2.この紛争調整委員会から指名される「あっせん委員」が、紛争解決に向けて

あっせんを実施する。

★紛争調停委員会によるあっせんの特徴
1.労働問題に関するあらゆる分野の紛争(▲募集・採用に関するものを除く。)

 がその対象となる。

2.多くの時間と費用を要する裁判に比べ、手続きが迅速かつ簡便である。

3.弁護士、大学教授、社会保険労務士等の労働問題の専門家が担当する。

4.あっせんを受けるのに費用はかからない。
▲ただし、あっせん代理人に依頼する場合は別途費用が発生する。

5.紛争当事者間であっせん案に合意した場合には、受諾されたあっせん案は

民法上の和解契約の効力を持つことになる。

6.あっせんの手続きは非公開であり、紛争当事者のプライバシーを保護する。

7.労働者があっせんの申請をしたことを理由として、事業主が労働者に対して解雇その他
不利益な取扱いをすることは法律で禁止されている。

 

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(委員会の組織)
第7条 委員会は、委員3人以上12人以内をもって組織する。

2 委員は、学識経験を有する者のうちから、厚生労働大臣が任命する。

3 委員会に会長を置き、委員の互選により選任する。

4 会長は会務を総理する。

5 会長に事故があるときは、委員のうちからあらかじめ互選された者がその職務を

 代理する。

(委員の任期等)
第8条 委員の任期は、2年とする。

    ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。

2 委員は、再任されることができる。

3 委員は、後任の委員が任命されるまでその職務を行う。

4 委員は、非常勤とする。

(委員の欠格条項)
第9条 次の各号のいずれかに該当する者は、委員となることができない。
①破産者で復権を得ないもの
②禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日

 から5年を経過しない者

2 委員が前項各号のいずれかに該当するに至ったときは、当然失職する。

(委員の解任)
第10条 厚生労働大臣は、委員が次の各号のいずれかに該当するときは、その委員を解任
     することができる。
①心身の故障のため職務の執行に堪えないと認められるとき。
②職務上の義務違反その他委員たるに適しない非行があると認められるとき。

(会議及び議決)
第11条 委員会の会議は、会長が招集する。

2 委員会は、会長又は第7条第5項の規定により会長を代理する者のほか、委員の過半数

 が出席しなければ、会議を開き、議決をすることができない。

3 委員会の議事は、出席者の過半数をもって決する。可否同数のときは、会長が決する。

(あっせん)
第12条 委員会によるあっせんは、委員のうちから会長が事件ごとに指名する

     3人のあっせん委員によって行う。

2 あっせん委員は、紛争当事者間をあっせんし、双方の主張の要点を確かめ、

 実情に即して事件が解決されるように努めなければならない。

第13条 あっせん委員は、紛争当事者から意見を聴取するほか、必要に応じ、参考人から

     意見を聴取し、又はこれらの者から意見書の提出を求め、事件の解決に必要な

     あっせん案を作成し、これを紛争当事者に提示することができる。

2 前項のあっせん案の作成は、あっせん委員の全員一致をもって行うものとする。

第14条 あっせん委員は、紛争当事者からの申立てに基づき必要があると認めるときは、

     当該委員会が置かれる都道府県労働局の管轄区域内の主要な労働者団体又は

     事業主団体が指名する関係労働者を代表する者又は関係事業主を代表する者

     から当該事件につき意見を聴くものとする。 

第15条 あっせん委員は、あっせんに係る紛争について、あっせんによっては紛争の解決

     の見込みがないと認めるときは、あっせんを打ち切ることができる。

(時効の中断)
第16条 前条の規定によりあっせんが打ち切られた場合において、当該あっせんの申請を

     した者がその旨の通知を受けた日から30日以内にあっせんの目的となった請求

     について訴えを提起したときは、時効の中断に関しては、あっせんの申請の時に、

     訴えの提起があったものとみなす。

(資料提供の要求等)
第17条 委員会は、当該委員会に係属している事件の解決のために必要があると認める

     ときは、関係行政庁に対し、資料の提供その他必要な協力を求めることができる。

(あっせん状況の報告)
第18条 委員会は、都道府県労働局長に対し、厚生労働省令で定めるところにより、

     あっせんの状況について報告しなければならない。

(厚生労働省令への委任)
第19条 この法律に定めるもののほか、委員会及びあっせんの手続に関し必要な事項は、

     厚生労働省令で定める。

(地方公共団体の施策等)
第20条 地方公共団体は、国の施策と相まって、当該地域の実情に応じ、

     個別労働関係紛争を未然に防止し、及び個別労働関係紛争の自主的な解決を

     促進するため、労働者、求職者又は事業主に対する情報の提供、相談、あっせん

     その他の必要な施策を推進するように努めるものとする。

2 国は、地方公共団体が実施する前項の施策を支援するため、情報の提供

 その他の必要な措置を講ずるものとする。

3 第1項の施策として、地方自治法第180条の2の規定に基づく都道府県知事の委任

 を受けて地方労働委員会が行う場合には、中央労働委員会は、当該地方労働委員会

 に対し、必要な助言又は指導をすることができる。

(船員に関する特例)
第21条 船員職業安定法第6条第1項に規定する船員及び同項に規定する船員になろう

     とする者に関しては、第3条、第4条第1項及び第2項並びに第5条第1項中

     「都道府県労働局長」とあるのは「地方運輸局長(海運監理部長を含む。)」と、

     同項中「紛争調整委員会にあっせんを行わせる」とあるのは

     「船員地方労働委員会にあっせんを委任する」とする。

2 前項の規定により読み替えられた第5条第1項の規定により委任を受けて船員地方

 労働委員会が行うあっせんについては、第6条から第19条までの規定は、適用しない。

3 前項のあっせんの事務は、公益委員のうちから当該船員地方労働委員会の会長が

 事件ごとに指名する3人のあっせん委員によって行う。この場合において、

 当該あっせん委員は、紛争当事者からの申立てに基づき必要があると認めるときは、

 使用者委員及び労働者委員のうちから当該船員地方労働委員会の会長が指名する委員

 から当該事件につき意見を聴くものとする。

4 第12条第2項、第13条及び第15条から第19条までの規定は、第2項のあっせんに

 ついて準用する。この場合において、第17条及び第18条中「委員会」とあるのは

 「船員地方労働委員会」と、同条中「都道府県労働局長」とあるのは「地方運輸局長

 (海運監理部長を含む。)」と、同条及び第19条中「厚生労働省令」とあるのは

 「船員中央労働委員会規則」と、同条中「委員会及びあっせん」とあるのは「あっせん」と

 読み替えるものとする。

5 第1項の規定により読み替えられた第3条、第4条第1項及び第2項並びに第5条第1項

 並びに前項の規定により読み替えて準用される第18条に規定する地方運輸局長

 (海運監理部長を含む。)の権限は、国土交通省令で定めるところにより、海運支局長に

 委任することができる。

(適用除外)
第22条 この法律は、国家公務員及び地方公務員については、適用しない。ただし、

     国営企業及び特定独立行政法人の労働関係に関する法律第2条第4号の職員、

     地方公営企業法第15条第1項の企業職員及び地方公務員法第57条に規定する

     単純な労務に雇用される一般職に属する地方公務員であって地方公営企業

     労働関係法第3条第2項の職員以外のものの勤務条件に関する事項についての

     紛争については、この限りでない。

 

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