テレワーク(在宅勤務等)ガイドライン

情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン

▽厚生労働省 H30.2.22策定

 

■趣旨

 労働者が情報通信技術を利用して行う事業場外勤務(テレワーク)は、業務を行う場所に応じて、労働者の自宅で業務を行う在宅勤務、労働者の属するメインのオフィス以外に設けられたオフィスを利用するサテライトオフィス勤務、ノートパソコンや携帯電話等を活用して臨機応変に選択した場所で業務を行うモバイル勤務といった分類がされる。

 

●労働者のメリット

・働く時間や場所を柔軟に活用することが可能

・通勤時間の短縮及びこれに伴う精神的・身体的負担の軽減

・仕事に集中できる環境での就労による業務効率化及びこれに伴う時間外労働の削減

・育児や介護と仕事の両立の一助となる等、仕事と生活の調和を図ることが可能

 

●使用者のメリット

・業務効率化による生産性の向上

・育児・介護等を理由とした労働者の離職の防止

・遠隔地の優秀な人材の確保

・オフィスコストの削減等

 

●テレワークの形態ごとの特徴

①在宅勤務

 通勤を要しないことから、事業場での勤務の場合に通勤に要する時間を有効に活用できる。また、例えば育児休業明けの労働者が短時間勤務等と組み合わせて勤務することが可能となること、保育所の近くで働くことが可能となること等から、仕事と家庭生活との両立に資する働き方である。

 

②サテライトオフィス勤務

 自宅の近くや通勤途中の場所等に設けられたサテライトオフィスでの勤務は、通勤時間を短縮しつつ、在宅勤務やモバイル勤務以上に作業環境の整った場所で就労可能な働き方である。

 

③モバイル勤務

 労働者が自由に働く場所を選択できる、外勤における移動時間を利用できる等、働く場所を柔軟に運用することで、業務の効率化を図ることが可能な働き方である。

 

▲企業側の問題点、課題等

・労働時間の管理が難しい

・情報セキュリティの確保に問題がある

 

▲労働者側の問題点、課題等

・仕事と仕事以外の切り分けが難しい

・長時間労働になりやすい

 

■労働基準関係法令の適用及び留意点等

1.労働条件の明示

 労働者に対し就労の開始時にテレワークを行わせる場合には、就業の場所としてテレワークを行う場所を明示しなければならない。また、労働者がテレワークを行うことを予定している場合においては、自宅やサテライトオフィス等、テレワークを行うことが可能である就業の場所を明示することが望ましい。

 なお、労働者が専らモバイル勤務をする場合等、業務内容や労働者の都合に合わせて働く場所を柔軟に運用する場合は、就業の場所についての許可基準を示した上で、「使用者が許可する場所」といった形で明示することも可能である。

 また、テレワークの実施とあわせて、始業及び終業の時刻の変更等を行うことを可能とする場合は、就業規則に記載するとともに、その旨を明示しなければならない。

 

2.労働時間制度の適用と留意点

使用者は、原則として労働時間を適正に把握する等労働時間を適切に管理する責務を有していることから、下記に掲げる各労働時間制度の留意点を踏まえた上で、労働時間の適正な管理を行う必要がある。

●通常の労働時間制度における留意点

(1)労働時間の適正な把握

通常の労働時間制度に基づきテレワークを行う場合についても、使用者は、その労働者の労働時間について適正に把握する責務を有し、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成29年1月20日策定)に基づき、適切に労働時間管理を行わなければならない。

同ガイドラインにおいては、労働時間を記録する原則的な方法として、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録によること等が挙げられている。また、やむを得ず自己申告制によって労働時間の把握を行う場合においても、同ガイドラインを踏まえた措置を講ずる必要がある。

 

(2)テレワークに際して生じやすい事象

テレワークについては、以下のような特有の事象に留意する必要がある。

①いわゆる中抜け時間について

 在宅勤務等のテレワークに際しては、一定程度労働者が業務から離れる時間が生じやすいと考えられる。 そのような時間について、使用者が業務の指示をしないこととし、労働者が労働から離れ、自由に利用することが保障されている場合には、その開始と終了の時間を報告させる等により、休憩時間として扱い、労働者のニーズに応じ、始業時刻を繰り上げる、又は終業時刻を繰り下げることや、その時間を休憩時間ではなく時間単位の年次有給休暇として取り扱うことが考えられる。なお、始業や終業の時刻の変更が行われることがある場合には、その旨を就業規則に記載しておかなければならない。また、時間単位の年次有給休暇を与える場合には、労使協定の締結が必要である。

 

②通勤時間や出張旅行中の移動時間中のテレワークについて

 テレワークの性質上、通勤時間や出張旅行中の移動時間に情報通信機器を用いて業務を行うことが可能である。 これらの時間について、使用者の明示又は黙示の指揮命令下で行われるものについては労働時間に該当する。

 

③勤務時間の一部でテレワークを行う際の移動時間について

 午前中だけ自宅やサテライトオフィスで勤務をしたのち、午後からオフィスに出勤する場合等、勤務時間の一部でテレワークを行う場合がある。

 こうした場合の就業場所間の移動時間が労働時間に該当するのか否かについては、使用者の指揮命令下に置かれている時間であるか否かにより、個別具体的に判断されることになる。

 使用者が移動することを労働者に命ずることなく、単に労働者自らの都合により就業場所間を移動し、その自由利用が保障されているような時間については、休憩時間として取り扱うことが考えられる。ただし、その場合であっても、使用者の指示を受けてモバイル勤務等に従事した場合には、その時間は労働時間に該当する。

 一方で、使用者が労働者に対し業務に従事するために必要な就業場所間の移動を命じており、その間の自由利用が保障されていない場合の移動時間は、労働時間と考えられる。例えば、テレワーク中の労働者に対して、使用者が具体的な業務のために急きょ至急の出社を求めたような場合は、当該移動時間は労働時間に当たる。

 なお、テレワークの制度の導入に当たっては、いわゆる中抜け時間や部分的テレワークの移動時間の取扱いについて、上記の考え方に基づき、労働者と使用者との間でその取扱いについて合意を得ておくことが望ましい。

 

(3)フレックスタイム制

 フレックスタイム制は、清算期間やその期間における総労働時間等を労使協定において定め、清算期間を平均し、1週当たりの労働時間が法定労働時間を超えない範囲内において、労働者が始業及び終業の時刻を決定し、生活と仕事との調和を図りながら効率的に働くことのできる制度であり、テレワークにおいても、本制度を活用することが可能である。

 例えば、労働者の都合に合わせて、始業や終業の時刻を調整することや、オフィス勤務の日は労働時間を長く、一方で在宅勤務の日の労働時間を短くして家庭生活に充てる時間を増やす、といった運用が可能である。

 

3.事業場外みなし労働時間制

 テレワークにより、労働者が労働時間の全部又は一部について事業場¥外で業務に従事した場合において、使用者の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間を算定することが困難なときは、労働基準法第38条の2で規定する事業場外労働のみなし労働時間制が適用される。

 テレワークにおいて、使用者の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間を算定することが困難であるというためには、以下の要件をいずれも満たす必要がある。

①情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態とされていないこと  

 

②随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないこと

 例えば、当該業務の目的、目標、期限等の基本的事項を指示することや、これら基本的事項について所要の変更の指示をすることは含まれない。

 

4.休憩時間の取扱いについて

 テレワークを行う労働者について、労使協定により、一斉付与の原則を適用除外とすることが可能である。

 

5.時間外・休日労働の労働時間管理について

 テレワークについて、実労働時間やみなされた労働時間が法定労働時間を超える場合や、法定休日に労働を行わせる場合には、時間外・休日労働に係る三六協定の締結、届出及び割増賃金の支払が必要となり、また、現実に深夜に労働した場合には、深夜労働に係る割増賃金の支払が必要となる。

 

●長時間労働対策について

 テレワークについては、業務の効率化に伴い、時間外労働の削減につながるというメリットが期待される一方で、労働者が使用者と離れた場所で勤務をするため相対的に使用者の管理の程度が弱くなるおそれがあること等から、長時間労働を招くおそれがあることも指摘されている。テレワークにおける長時間労働等を防ぐ手法としては、以下のような手法が考えられる。

①メール送付の抑制

 テレワークにおいて長時間労働が生じる要因として、時間外、休日又は深夜に業務に係る指示や報告がメール送付されることが挙げられる。 そのため、役職者等から時間外、休日又は深夜におけるメールを送付することの自粛を命ずること等が有効である。

 

②システムへのアクセス制限

 テレワークを行う際に、企業等の社内システムに外部のパソコン等からアクセスする形態をとる場合が多いが、深夜・休日はアクセスできないよう設定することで長時間労働を防ぐことが有効である。

 

③テレワークを行う際の時間外・休日・深夜労働の原則禁止等

 業務の効率化やワークライフバランスの実現の観点からテレワークの制度を導入する場合、その趣旨を踏まえ、時間外・休日・深夜労働を原則禁止とすることも有効である。この場合、テレワークを行う労働者に、テレワークの趣旨を十分理解させるとともに、テレワークを行う労働者に対する時間外・休日・深夜労働の原則禁止や使用者等による許可制とすること等を、就業規則等に明記しておくことや、時間外・休日労働に関する36協定の締結の仕方を工夫することが有効である。

 

④長時間労働等を行う労働者への注意喚起

 テレワークにより長時間労働が生じるおそれのある労働者や、休日・深夜労働が生じた労働者に対して、注意喚起を行うことが有効である。

 具体的には、管理者が労働時間の記録を踏まえて行う方法や、労務管理のシステムを活用して対象者に自動で警告を表示するような方法がある。

 

●労働災害の補償に関する留意点

 テレワークを行う労働者については、事業場における勤務と同様、労働基準法に基づき、使用者が労働災害に対する補償責任を負うことから、労働契約に基づいて事業主の支配下にあることによって生じたテレワークにおける災害は、業務上の災害として労災保険給付の対象となる。ただし、私的行為等業務以外が原因であるものについては、業務上の災害とは認められない。

 在宅勤務を行っている労働者等、テレワークを行う労働者については、この点を十分理解していない可能性もあるため、使用者はこの点を十分周知することが望ましい。

 

■その他テレワークの制度を適切に導入及び実施するに当たっての注意点

1.労使双方の共通の認識

 テレワークの制度を適切に導入するに当たっては、労使で認識に齟齬のないように、あらかじめ導入の目的、対象となる業務、労働者の範囲、テレワークの方法等について、労使委員会等の場で十分に納得のいくまで協議し、文書にして保存する等の手続をすることが望ましい。

 また、個々の労働者がテレワークの対象となり得る場合であっても、実際にテレワークを行うか否かは本人の意思によることとすべきである。

 

2.業務の円滑な遂行

 テレワークを行う労働者が業務を円滑かつ効率的に遂行するためには、業務内容や業務遂行方法等を明確にして行わせることが望ましい。また、あらかじめ通常又は緊急時の連絡方法について、労使間で取り決めておくことが望ましい。

 

3.業績評価等の取扱い

 専らテレワークを行う労働者等、職場に出勤する頻度の低い労働者については、業績評価等について、評価者や労働者が懸念を抱くことのないように、評価制度及び賃金制度を明確にすることが望ましい。

 特に、業績評価や人事管理に関して、テレワークを行う労働者について通常の労働者と異なる取扱いを行う場合には、あらかじめテレワークを選択しようとする労働者に対して当該取扱いの内容を説明することが望ましい。

 また、いつまでに何をするといった形で、仕事の成果に重点を置いた評価を行う場合は、テレワークの場合であっても事業場での勤務と同様の評価が可能であるので、こうした場合は、評価者に対して、労働者の勤務状況が見えないことのみを理由に不当な評価を行わないよう注意喚起することが望ましい。

 なお、テレワークを行う労働者について、通常の労働者と異なる賃金制度等を定める場合には、就業規則を作成・変更し、届け出なければならない。

 

4.通信費、情報通信機器等のテレワークに要する費用負担の取扱い

 テレワークに要する通信費、情報通信機器等の費用負担、サテライトオフィスの利用に要する費用、専らテレワークを行い事業場への出勤を要しないとされている労働者が事業場へ出勤する際の交通費等、テレワークを行うことによって生じる費用については、通常の勤務と異なり、テレワークを行う労働者がその負担を負うことがあり得ることから、労使のどちらが負担するか、また、使用者が負担する場合における限度額、労働者が請求する場合の請求方法等については、あらかじめ労使で十分に話し合い、就業規則等において定めておくことが望ましい。

 特に、労働者に情報通信機器、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合には、当該事項について就業規則に規定しなければならない。

 

5.社内教育等の取扱い

 テレワークを行う労働者については、OJT による教育の機会が得がたい面もあることから、労働者が能力開発等において不安に感じることのないよう、社内教育等の充実を図ることが望ましい。

 なお、社内教育等を実施する際は、必要に応じ、総務省が作成している「テレワークセキュリティガイドライン」を活用する等して、テレワークを行う上での情報セキュリティ対策についても十分理解を得ておくことが望ましい。

 また、テレワークを行う労働者について、社内教育や研修制度に関する定めをする場合には、当該事項について就業規則に規定しなければならない。

 

■テレワークを行う労働者の自律

 テレワークを行う労働者においても、勤務する時間帯や自らの健康に十分に注意を払いつつ、作業能率を勘案して自律的に業務を遂行することが求められる。

 

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