新型コロナウイルスに伴う労働基準法等のQ&A

令和2年4月24日時点版(厚生労働省)

 

■労働基準法関係

Q1.新型コロナウイルスに関連して労働者を休業させる場合の留意点は?

A.賃金の支払の必要性の有無等については、個別事案ごとに諸事情を総合的に勘案す

 べきものであるが、法律上、労働基準法第26条に定める休業手当を支払う必要性の有

 無については、一般的には以下のように考えられる。

 (以下は現時点の状況を基にしており、今後の新型コロナウイルスの流行状況等に応

 じて変更される可能性がある。)

  

①労働者が新型コロナウイルスに感染したため休業させる場合

→新型コロナウイルスに感染しており、都道府県知事が行う就業制限により労働者が休業する場合は、一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当しないと考えられるので、休業手当を支払う必要はない。

 

②労働者に発熱などの症状があるため休業させる場合

→新型コロナウイルスかどうか分からない時点で、発熱などの症状があるため労働者が自主的に休む場合は、通常の病欠と同様に取り扱う。

一方、例えば熱が37.5度以上あることなど一定の症状があることのみをもって一律に労働者を休ませる措置をとる場合のように、使用者の自主的な判断で休業させる場合は、一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当てはまり、休業手当を支払う必要がある。

 

③武漢市を含む湖北省から帰国した労働者等の新型コロナウイルスに感染した可能性の

 ある労働者を休業させる場合

→医療機関の受診の結果、職務の継続が可能である労働者について、使用者の自主的判断で休業させる場合には、一般的に「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当てはまり、休業手当を支払う必要がある。

 

Q2.新型コロナウイルスに感染している疑いのある労働者について、一律に年次有給

 休暇を取得したこととする取扱いは、労働基準法上問題はないか。病気休暇を取得し

 たこととする場合はどうか。

A.年次有給休暇は原則として労働者の請求する時季に与えなければならないであり、使用者が一方的に取得させることはできない。事業場で任意に設けられた病気休暇により対応する場合は、事業場の就業規則等の規定に照らし適切に取り扱うこと。

 

Q3.新型コロナウイルスの感染の防止や感染者の看護等のために労働者が働く場合、

 労働基準法第33条第1項の「災害その他避けることができない事由によって、臨時の

 必要がある場合」に該当するでしょうか。

A.今回の新型コロナウイルスが指定感染症に定められており、一般に急病への対応は、人命・公益の保護の観点から急務と考えられるので、労働基準法第33条第1項の要件に該当し得るものと考えられる。

災害その他避けることのできない事由により臨時に時間外・休日労働をさせる必要がある場合には、36協定によるほか、労働基準法第33条第1項により、使用者は、労働基準監督署長の許可(事態が急迫している場合は事後の届出)により、必要な限度の範囲内に限り時間外・休日労働をさせることができるとされている。労働基準法第33条第1項は、災害、緊急、不可抗力その他客観的に避けることのできない場合の規定なので、厳格に運用すべきものである。

  なお、労働基準法第33条第1項による場合であっても、時間外労働・休日労働や深夜労働についての割増賃金の支払は必要である。

 

■安全衛生法関係

Q1.労働安全衛生法第68条に基づく病者の就業禁止の措置を講ずる必要はあるか。

A.令和2年2月1日付けで、新型コロナウイルス感染症が指定感染症として定められたことにより、労働者が新型コロナウイルスに感染していることが確認された場合は、感染症法に基づき、都道府県知事が就業制限や入院の勧告等を行うことができるので、それに従う必要がある。

  労働安全衛生法第68条に基づく病者の就業制限の措置については対象とならない。

  

■労働者派遣

 

▽労働者派遣契約の中途解除等について

Q1.(派遣先)改正新型インフルエンザ特別措置法に基づく緊急事態宣言下で、都道府県知事からの要請・指示等を受け、事業を休止したことを理由として、労働者派遣契約を中途解除せざるをえない場合、派遣先は、労働者派遣法第29条の2に基づく措置を講ずる必要はあるか?

A.労働者派遣法第29条の2により、派遣先は、自らの都合により労働者派遣契約を解除する場合には、新たな就業の機会の確保や休業手当等の支払に要する費用の負担等の措置を講じなければならない。

派遣先の都合によるかどうかについては、個別の事例ごとに判断されるものであり、改正新型インフルエンザ特別措置法に基づく緊急事態宣言下で、都道府県知事から施設の使用制限や停止等の要請・指示等を受けて派遣先において事業を休止したことに伴い、労働者派遣契約を中途解除する場合であっても、一律に労働者派遣法第29条の2に基づく措置を講ずる義務がなくなるものではない。

なお、労働者派遣契約の中途解除が派遣先の都合によらないものであっても、派遣先は、「派遣先が講ずべき措置に関する指針」第2の6の(3)に基づき、関連会社での就業をあっせんするなどにより、派遣労働者の新たな就業機会の確保を図ることが必要である。

   今回の新型コロナウイルス感染症により、事業の休止等を余儀なくされた場合においても、安易な労働者派遣契約の解除は控えるようお願いする。

 

Q2.(派遣先)改正新型インフルエンザ特別措置法に基づく緊急事態宣言下で、都道府県知事

 からの要請・指示等を受け、事業を休止したことを理由として、労働者派遣契約の内容の変更

 等を行う場合に、派遣先は派遣元事業主から派遣料金や金銭補償を求められることになる

 か。

A.労働者派遣契約の履行を一時的に停止する場合や、労働時間や日数など労働者派遣契約

 の内容の一部を変更する場合には、それに伴う派遣料金等の取扱いについては、民事上の契

 約関係の話なので、労働者派遣契約上の規定に基づき、派遣元と派遣先でよく話し合い、

 対応してください。

 

Q3.(派遣元)改正新型インフルエンザ特別措置法に基づく緊急事態宣言下における都道府県

 知事からの要請・指示等を受けて事業を休止した派遣先から、労働者派遣契約の中途解除を

 申し込まれているが、派遣元としてどのような対応を行うべきか。 

A.「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」第2の2の(3)及び(4)により、派遣元事業主は、ある派遣先との間で労働者派遣契約が中途解除された場合であっても労働者派遣の終了のみを理由として派遣労働者を解雇してはならない。

  派遣先とも協力しながら派遣労働者の新たな就業機会の確保を図り、それができない場合

 はまずは休業等を行い雇用の維持を図るとともに、休業手当の支払等の労働基準法等に基

 づく責任を果たすことが必要である。

  なお、新型コロナウイルス感染症の影響に伴う経済上の理由により事業活動の縮小を余儀

 無くされた派遣元事業主が、派遣労働者の雇用の維持のために休業等を実施し、休業手当を

 支払う場合、雇用調整助成金が利用できる場合がありますので、これを活用すること等によ

 り、派遣労働者の雇用の維持を図っていただくようお願いする。

  

▽派遣労働者のテレワークについて

Q4.(派遣先)改正新型インフルエンザ特別措置法に基づく緊急事態宣言が出されたこと等を踏まえ、派遣労働者についてもテレワークの実施を行うに当たり、労働者派遣法に関して留意すべきことはあるか。

A.新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止するためには、テレワークが有効な対策の1つであり、派遣労働者についても、派遣先が自ら雇用する労働者と同様に、積極的なテレワークの活用をお願いする()。  

派遣労働者に関しテレワークを実施するためには、就業の場所などについて、労働者派遣契約の一部変更を行うことが必要になる場合がある。  

この場合の契約の変更については、緊急の必要がある場合についてまで、事前に書面による契約の締結を行うことを要するものではありません。ただし、派遣元事業主と派遣先の間で十分話し合い、合意しておくことは必要ですので、ご留意ください。  

  

(※)派遣先での派遣労働者に対する指揮命令は、必ずしも対面で実施しなければならないものではありません。業務の内容を踏まえ、テレワークによっても必要な指揮命令をしながら業務遂行が可能かどうか、個別にご検討ください。

  

(契約変更の例)

   令和日付け労働者派遣契約と同内容で、○○株式会社は、□□株式会社に対し、労働者派遣を行うものとする。ただし、就業の場所は、□□株式会社の△△事業所(テレワークを実施する場合には派遣労働者の自宅)とする。

 

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